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アナログレコードによるリリースについて

我々トーニャハーディングは1st EPとして
spa wars」というアナログレコードをリリースしました。

レコードをリリースする、ということに際して

・リスナーとして
・DJとして
・アーティストとして

上記3つの観点があり、
またそれらを良い意味でも悪い意味でも
混同していることに気が付きました。

拙い考えですが、DJトーニャハーディング個人として
記しておきたいと思います。

❙リスナーとして

・単純にレコードで聴きたい

spa warsは良い曲で、生音中心で録音や
マスタリングにもこだわった良い音だから
是非アナログレコードで聴きたい。

早稲田茶箱や渋谷OTOのようなシステム、
生音がそこそこ綺麗な音で鳴る自分の部屋なら
良い音を楽しめるんだろうな、
という思いがありました。

・環境、機材、腕を選ぶ

とは言え、「レコードを良い音で聴く」
というのは上を見ればキリがなく
手間も予算も青天井、
多くの人が納得する環境を構築するのも
簡単なことではありません。

また、既にそのようなシステムを持っているお店で
聴きたいレコードを聴く、ということも
それなりのルール、手続きが発生します。

家庭・個人レベルではそもそもレコードを
聴くためのレコードプレーヤーやターンテーブルを
持っていない人が多い、という問題があります。

これを考えたときに、PCやポータブルプレーヤーでも
聴けた方が便利であるのでレコード購入者には
データ配布する、というのはサービスでも何でもなく
当然のことであるという結論に至りました。

・予想外

嬉しい誤算としては、spa warsをアナログで
聴きたいからレコードプレーヤーを買った、
という人まで現れてくれたことです。

PC作業、通勤電車、車での通勤の際に
僕らの音楽を聴いてくれることだけでも
大変ありがたいことですが、

「ながら」ではなく「(トーニャハーディングの)音楽を聴くため」

の時間や環境を手に入れてくれた、
これ程の喜びはありません。
我々のレコードはあくまできっかけであり、
多くの名盤を手にするつもりで
いらっしゃるかとは思います。

この時代にあって、わざわざレコードを聴く、
というのは既に「贅沢」の領域といっても
過言ではありません。

・神戸のジャズ喫茶

先日、神戸のイベントに呼んでいただいて、
DJとライブパフォーマンスをしました。
とても素晴らしいイベントで楽しかったです。

翌日、友人に観光案内をしてもらい、
神戸の素晴らしさ・偉大さの片鱗に
触れることが出来たのはとても幸せでした。

一番最後に連れていってもらった
ジャズ喫茶がとても興味深いものでした。

かなりの音量、素晴らしい音で
モダンジャズのレコードを流しており、
スピーカー近くのフロアのおよそ半分の
面積を占める席とテーブル席は

「リスニングゾーン」

として私語厳禁であり、
音楽に集中する席なのです。

空気がピンと張り詰めており、
ブルーノートの前列でステーキを食べながら
楽しく演奏を聴くその様よりもずっと
緊張感が漲っているように感じたのが
とても面白いです。

大音量のジャズをBGMに
書き物や読み物をしている猛者も・・・

これぞジャズ喫茶というスタイルかもしれませんが、
私が知っているジャズバーやジャズ喫茶は
もっとルールがユルいところが多いので、
とても新鮮な体験でした。

比べてしまうと、spa warsはここまでシビアに
聴く音楽では無いですね(笑)
しかし、音楽を、レコードをこうやって
嗜む文化は絶対に廃れさせてはならないとも
強く思いました。

❙DJとして

・敢えてレコードを選ぶDJたち

DJにはざっくりと、PC、CD(USBメモリ)、
アナログレコードを使うDJがいます。

昨今、多くのDJイベントにおいて、
物語、文脈、情報量の総合点がある程度
求められているように感じます。

高い、重い、場所を取る、など
物理的に持参出来るライブラリ数が少ないので、
その他のメディアや手法に比べると
レコードは圧倒的に不利・不便であると
一般的には思われます。

しかしながら、その日のテーマやDJ各人の
考え方によってはレコードを存分に
楽しむことが出来ますし、また敢えて
レコードをメインで使い続けるというDJがいます。

かくいう私もイベントによっては
レコードのみでDJさせてもらっています。

・テクノロジーへの反逆?

これを、テクノロジーやファッションへの
反逆と捉える考え方も面白いです。

中古レコードで安く沢山手に入れられたとしても
やはりレコードは重く(1枚400g弱)
1回のイベントに持参出来る量は
限られていますから、それ以外に幾つも
代替手段がある中でレコードでDJをする
ということにはそれなりの信念めいたものが
必要なのではないかと考えます。

また、

「デジタルは音が悪い、アナログは音が良い」

などのような言説もあります。
ここでは熱弁を振るうつもりも無いですし、
既に上記で書いた通りアナログレコードで
良いパフォーマンスを出すためには
それなりの環境が必要なのとアナログ盤自体
品質が良くなくてはなりません。

最終的には、出音やプレイ内容、
パフォーマンスが良ければ客にとっては
それまでのプロセスはどうでも良い、
というのが正論なのではないかと思います。

が、その最終結果の中に、初見のお客さんをも
取り込んでしまうようなこだわり、熱意、
レコードへの愛情があったからこそ
生まれた繋ぎやパフォーマンス、風格、
という可能性があることも忘れたくは無いです。

・自分がDJをはじめた時のこと

私は2000年前後にDJをはじめました。
当時はクラブに良くあるTechnicsの
ターンテーブル2台とミキサー、
出音はCDコンポ、というシステムを
自室に構えていました。

宇田川町、新宿、中野、吉祥寺
辺りに良く出向いてレコード屋さんを
巡っていました。

ジャンルは主にハウスとジャズで、
現在メインのJPOP DJスタイルしか知らない人にとっては
驚きと笑いの違いぶりだと思います。
その後、多少細かく言うと、
ディスコダブやテクノのようなジャンルも
少しずつ聴いてゆきました。

あの頃、ここまでレコード屋さんが
無くなってしまうことは予想していませんでしたが、
時代は確実にデジタル化に向かっており、
レコードも「敢えてプレスする」という
ものに変わっていった気がします。

そんな潮流の中、

「いつか自分の曲をレコードで出したい」

という気持ちは確実にありました。
まさかその曲がspa warsとjoy time peopleに
なろうとは笑。当時はハウスミュージックか
何かを作る気マンマンでいました。

・レコードを出すということ

たかが10数年、されど10数年のDJ歴で、
成功体験と言えるようなことは
ほとんどありませんでした。

純粋に楽しいから始めたことなのに、
自分にはDJの力が無い、音楽センスが無い、
人の心がわからない、つまりDJをやる資格が無い、
そんなことを何度も考えていましたし、
己の至らなさから友人を失ったり、
イベントをかき乱してしまったりと、

「レコードを出す」

なんて夢のまた夢だったのです。
当時関わってくれていた人には
大変失望させたことでしょうから、
今後自分がどうなったとしても、
感謝の気持ちと謝罪の気持ちを
忘れないで生きてゆきます。

レコードを出せたことについての経緯は
他の場に譲りますが、

「レコードを出す」

ということは私にとっては単なる決意と信念でした。

出すと決めたからさてどうするか、
というもの以外の何ものでもありません。
条件が揃ったから出せる、
ファンが沢山いるから出す、
流行していて儲かりそうだから出す、
そのような考えでは一生出せなかったでしょう。

❙アーティストとして

・小鐵ルームの衝撃

レコードを出すためのプロジェクト、
クラウドファンディングPICNICで
直接ご支援くださった方々には
サンクスメールで経緯を語らせてもらいましたが、
spa warsは日本屈指のマスタリングエンジニア
小鐵徹氏にカッティングを依頼しました。

カッティング納期を急いでいただいただけでなく、
現場立ち会いも許可いただけたので、
中央林間にある通称「小鐵ルーム」に
お邪魔しました。

部屋には小鐵さんワークスによる
重鎮アーティストたちのレコードが並び、
そこに並び立つなどとは恐れ多いものの、
音質にこだわるミュージシャンと同じく
小鐵さんにお願いすることが出来たのだと
喜びを噛み締めています。

「ラッカー盤」という、レコードプレスする
前工程に必要なもの、これをカッティングする
作業に立ち会い、機材の詰まった部屋そのもの、
一連の作業に大変感動しました。

ラッカー盤を試聴した時にはそのあまりの
音の良さに、自分たちの曲でありながら、
鳥肌が立ち、涙が出ました。

一生の思い出ではありますが、
単なる思い出にせずもう一度
小鐵さんにお仕事を依頼することが、
皆さんや小鐵さんへの恩返しだと考えています。

・何と闘っているのか

ブログ: トーニャハーディング is still alive
で呪いのように再三書いていることがあります。

大好きなアイドルや音楽イベントなどの
楽しみ方や現場そのものが歴史を重ねる中で、
コンテンツそのものや関連事項がデータベース化され、
メタ的な楽しみ方やパッケージが漫然と
良しとされてきているように感じてしまっています。

穿った見方かもしれませんが、
全ては出揃っていて、今やエンターテイメントは
組み合わせ”だけ”の問題であるという諦観や
露骨な元ネタありきのプロダクト、
そういったものへのツッコミ待ちの姿勢が
需給サイドを選ばず蔓延しているような気がしてなりません。

自分はダサくても良いから、
前のめりで、意地を張り、
そこから脱却したいという思いで必死です。

「その結果がspa wars程度のものか」

と言われればそれまでですが、
spa warsとjoy time peopleは
素晴らしい曲だという自信がありますし
我々はまだまだ進化し続けています。

❙一番言いたいこと

もし私と同じく思いを形にすることや
思いを人に伝えることに苦労している人があるならば、

・相手に何を伝えたいか
・相手に何を感じて欲しいか
・相手をどんな状態にしたいか

これに向き合い続けてもらいたいです。
とてもしんどい作業だとは思います。

そして

「人を変えることは出来ない」

と言われることがあり、それは
ある意味真理だというのも頷けます。
ただ、私たちのように音楽をやる者が
それを認めてしまったら終わりです。

音楽によって少しでも人を喜ばせたい、
自分を育ててくれたミュージシャンの先達のように。
最近になってようやく、誰に笑われても良いから
真剣にそう思えるようになりました。

そんな思いの一部でも我々のレコードを
手に取ってくださった人に届いていれば幸いです。
いや、単純に楽しんでいただければそれで充分です笑


トーニャハーディング

2014-07-28 | Posted in blog |