トーニャハーディング1st EP レコード発売に寄せて / サカノウエヨースケ

トーニャハーディング1st EP レコード発売に寄せて

「トーニャハーディングとDAFT PUNK」

トーニャハーディングのDJという土台があっての音楽に対する姿勢と今や世界的に有名DJユニットとなったフランスのDAFT PUNKの音に対する憧れの姿勢というのは僕はすごく近いんじゃないかと思っている。

そして、僕はいずれ、トーニャハーディングから生み出される音楽と日本のクラブミュージックの地位が向上するのと比例するように「ONE MORE TIME」のような爆発的なフロアアンセムを生み出す日も近いんじゃないかと信じてやまないのだ。

DJトーニャハーディングとして数々のフロアを沸かせ、サブカル、アイドル、オタクカルチャー、和モノムーブメントそれらをいっしょくたに飲み込んでスピンし煽り、歌いまくるそのDJの姿に何度も感動したし、共演させてもらうたびに「感涙もののキラーチューン」を惜しげも無く披露するのだが、その裏側には緻密な情報量とサウンドシステムが頭の中に常に膨大に搭載されてる事を僕は知っている。

例えば、リミックスなんかがそうだ。彼にリミックスをお願いすると、参考音源として有名なヒット曲を例に出して「こんな感じにして欲しい」とお願いしたりするのだけれど、彼はそのヒット曲だけじゃなく、例えばそのアーティストのライブ盤の曲から、果てはそのMCまでを頭の中に情報としてインプットしていて、そのMCを「サンプリングに使う様なイメージでリミックスをしてみるのはどうか?」と1に対して10のアンサーやアイデアが返ってくるなんてことはざらにある。

そして、今回届いた、「SPA WARS」と「JOY TIME PEOPLE」の2曲をアナログでリリースするということで視聴させてもらった。スピーカーから音を爆音で鳴らし一聴した瞬間。僕はニヤリとした。

「完全、生やんっ!!」

今までのトーニャハーディングを知る人ならやはり強い四つ打ちのエレクトロなビートに、、、うねるベースラインが鳴って、頭の中ではやはりクラブミュージック対応な打ち込みが、、、、鳴っていない!!!そしてグルーブや歌の息づかい、キメ、、、全てが生なのである。それは人力で音を再現していくバンドサウンドなのだ。

今までDJとして築いて来た頭の中にある、膨大な情報や経験値、テクニックを総動員した受動的な音ではなくて、それらをいっさい取っ払った、音楽に対する「憧れ」や「初期衝動」、「感動」や「敬意」そういった感情的なものを肉体的に鳴らしているのだ。

それも本能で、それはもはや、ロックキッズに憧れるKIDSであり、グルーヴは「せーの」で鳴らすバンドそのものだし、もともとの音楽の在り方である、男性が女性を求愛するようにはじまったと言われる「ダンス」そのものなわけです。作られた「ミラクル」ではなくて、ほんまもんの「奇跡」が見たいんだなぁ。この人達はと急激に愛おしく感じました。

で、DAFT PUNKであります。

彼らの音楽を聞いていると、いつもその肉体的に鳴らす音楽への「憧れ」や生の「サウンド」や「グルーブ」に飢えていると感じる事がある。もともとは、普通にロックやブルース、ソウルやファンクミュージックが大好きで、それをDJというシステムの中で最小人数で最大公約数を残すかの如くサウンドをプログラミングしてフロアに流す。アウトプットがバンドのそれとは違うだけで発想はバンドマンのそれと近いんじゃないかと音が訴求してくるのです。

煌めく音がトラックの中で鳴っていてもいつもその音はまるで「せーので鳴らすバンドサウンド」を追いかけているようにも感じるし、そういう肉体的に鳴らす緊張感から生まれる「奇跡」をいつも待っているかのような気すらするのだ。そして、それらの事を踏まえて鳴らされるプログラミング音は、一切の音の不協和音のぶつかりはなく、引っ込みがちな楽器の音は全て整然と綺麗に整えられ、まるで、「礼儀はしっかりつけときます」といわんばかりに優等生な音が鳴らされまくっているのであります。

これは、バンドではなかなか再現できないわけで、既に「答え」を最初に導きだしてからスタートした音楽スタイルのような、そんなどこか矛盾した音楽性をDAFT PUNKに感じる時があるのだけど。

きっとこれって、国民性もあるんじゃないかと思っていて、パリに少し滞在していた時に、ライブハウスの少なさに驚いた、むしろクラブの数の方が超圧倒的に多い。そして、パリのミュージックヘッズはDRAGON ASHやブルーハーツやマキシマムザホルモンを聞いてギターを買い、やがてバンドを組みという音楽をはじめるという日本のロックキッズの正攻法が、すべてクラブミュージックはじまりなのだ。

小さい頃にダフトパンクを聞いて、貯めたお小遣いでターンテーブルを買い、やがてユニットを結成し、「ダブステップのあのキメ最高さ!!」なんていいながら、夢を追いかけていたりするキッズばっかだった。そして武道館を満杯にするのが夢です!!ではなく、THE PRODIGYのリミックスをするのが夢なんだ!!というニュアンスというか。

だから、クラブミュージックの地位というのが国の中で完全に確立されていてフランスからDAFT PUNKは出るべくして出たDJユニットなのだとすれば、日本のクラブミュージックの地位が向上していけばいくほど、トーニャハーディング的発想を持ったDJがたくさん現れて彼らを目指すのではないかと思うのです。

フランスのDAFT PUNKが「永遠のロックキッズの憧れや衝動を肉体的な発想で鳴らす」DJなのだとしたら「受動的な音や情報を肉体的な発想で鳴らす」DJっ!!それが日本のトーニャハーディングなのだ。そして、日本中で、世界中で、鳴らされまくるトーニャハーディング mede 日本発のフロアアンセムが鳴り響きまくる日の事を僕は少年のような面持ちで夢を見ている。

サカノウエヨースケ
サカノウエヨースケ

『冬の帰り道』(album「THE POPS」収録)Full Version

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